教えて!薬剤師さん
【28回目】お薬をもっと飲みたい!誤飲事故防止
お薬を飲ませたい時に飲んでくれると、保護者としてはとてもありがた いことです。なかなか薬を飲んでくれない場合、無理やり口をこじ開け て飲ませようか、何に混ぜたら飲んでくれるだろうかと思案しなければ いけません。お薬は少ない量では効果が得られず、多い量では副作用が 発現する可能性があるため、決められた量のお薬を決められたタイミン
グで内服することが大切です。 また、保護者が内服している薬にも興味を示し、口にいれてしまう誤飲事故が後を絶ちません。子どもの 年齢に応じた対策を行い、誤飲事故を予防しましょう。
生後6か月~1歳半 | 身近にあるものを手に取り何でも口に運ぶ |
1~2歳頃 | 周囲への興味や関心が高まり人の模倣する |
2歳頃以降 | 興味を持ったモノに対して、道具を使うなどして好んで手に取る |
お薬を飲むときには、お薬は一人で飲まないこと、お薬にはつらい症 状をやわらげるためにのんでいる ことを説明しながら、服薬しましょう。
薬剤師 中野洋子
【27回目】RS ウイルス母子免疫ワクチンとは?
RS ウイルス母子免疫ワクチンとは、妊婦に接種するワクチンです。母体の RS ウイルスに対する中和抗体価を高め、胎盤を通じて母体から胎児へ 中和抗体が移行することで、乳児における RS ウイルスを原因とるす下気道疾患を予防します。妊娠 24~36 週の妊婦に1回0.5mL 筋肉注射します。28 週以降がより効果が高いと報告があります。
RS ウイルスは世界中に広く分布しており、生後1歳までに 50%が、2歳までにほぼ 100%が RS ウイルスに感染します。乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の 50~90%が RS ウイルス感染症によるとされてい ます。症状は感冒様症状から下気道感染に至るまで様々ですが、特に生後 6か月未満で感染すると重症化することが示されています。また、合併症 として、無呼吸、急性脳症などがあり、後遺症として反復喘鳴(気管支喘息)があります。RS ウイルス感 染症と診断された2歳未満の乳幼児の約 4 分の1で入院が必要と推定されているものの、特効薬はありま せん。重度の RS ウイルス関連下気道感染症に対して、生後 90 日で 81.1%、180 日で 69.4%の有効性 が認められています。特に生後1~2か月の感染は入院率が高いので、妊婦のワクチン接種は、生まれてく る子への贈り物となることでしょう。
薬剤師 中野洋子
商品名:アブリスボ筋注用 | 費用 30000~38000 円 妊娠 24~36 週で1回接種 |
参考文献:RS ウイルス母子免疫ワクチンに関する考え方 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会
【26回目】OS-1は薄めて飲ませたらいい?
熱中症予防に0S-1とCMで流れているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか?OS-1は経口補水液に分類されるもので、別名飲む点滴と呼ばれています。熱中症に限らず、発熱、下痢、嘔吐など食事量が減った時に利用し、電解質、水分、糖分を補給することができます。消費者庁の特別用途食品 個別評価型病者用食品の表示許可を取得しています。
経口補水液は、電解質、糖分、水分を身体が吸収しやすい比率で調整されています。水やジュースで薄めることは、そのバランスを崩してしますことになるため、期待した効果が得られません。飲むときは薄めずそのまま(粉末の製品は既定の水分量で溶かす)で飲用しましょう。美味しく飲める場合は、脱水の可能性が非常に高いです。脱水でなければ、塩辛くて飲みにく飲み物です。乳児の場合はミルクの量が減っている時のみ経口補水液を利用し、飲めていない場合は速やかな受診をお勧めいたします。OS-1以外の経口補水液にはアクアソリタがあります。いずれもスポーツ飲料とは用途の目的が異なるものです。参考までに自宅で作れる経口補水液レシピをのせておきます。
学童〜成人 | 500-1000ml/日 |
幼児 | 300-600ml/日 |
乳児 | 30-50ml/日 |
薬剤師 中野洋子
【25回目】授乳中の薬はどうしたらいい?
体調が悪くても、頭が痛くても、花粉症がつらくても、授乳中は薬を控えるべき、との考えはまだまだ根強く残っています。今回は授乳時の薬物療法について取り上げます。
授乳中にママが薬物療法を躊躇してしまう理由、それは、自分が内服したり、使ったりした薬が、赤ちゃんが飲んでしまうのではないか、その結果、悪い影響を与えるのではないか、という不安です。母乳は血液からつくられ、飲んだお薬も母乳中に分泌されますが、多くの薬では母乳中に含まれる量はとても少ない量になります。さらに、お薬が含まれる母乳をのんでも、赤ちゃんの血液に届くまでにはお薬の量はどんどん少なくなり、赤ちゃん自身にお薬の影響が出る可能性はとても低いのです。月齢が大きくなり、離乳食がすすんだり、ミルクとの混合栄養によって母乳を飲む量が減ると、お薬の影響はさらに低下します。
薬物療法を理由に授乳を中止した場合、母乳分泌が低下し、母乳育児の再開が困難になることもあります。簡単に母乳育児をあきらめず、本当に中止する必要があるのか、医師や薬剤師に納得できるまで確認することが大切です。わいわいステーションでは、月に1回お薬相談を行っていますので、お気軽にご相談くださいね。
参考文献:国立成育医療研究センター 授乳と薬について知りたい方へ
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/
薬剤師 中野洋子
【24回目】子宮頸がんワクチンは接種した方がいい?
子宮頸がんは子宮の出口に近い頸部にできるがんで、若い女性のがんの中で多くを占めます。日本では、毎年1万人の女性がかかり、3000人亡が亡くなっています。20代から増え始め、30代までにがんの治療で子宮を失ってしまう人も年間1000人います。子宮頸がんは1982年にヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染で生じることが発見されました。このウイルスは多くの方が性的接触で感染する一般的なウイルスで、ごく一部の人ががんとなります。子宮頸がんをはじめ、肛門がん、膣がんなどのがんや、尖圭コンジローマ等、多くの病気の発生に関わっています。
子宮頸がんは早期発見し、手術等の治療を受ければ、命を落とさず治すことができる病気です。20歳以降は2年毎に健診を受けましょう。またウイルスの感染をワクチンで予防すれば、がんの発症を抑制することができます。
以前、ワクチンを接種したあとに、広い範囲に広がる痛み、手足の動かしにくさ、不随意運動など多様な症状が現れるとの報道がありましたが、様々な調査研究によって、ワクチン接種との因果関係があるとは言えないと報告されています。この時、ワクチン接種を控えた1997~2008年度生まれの女性に、現在、公費負担によるキャッチアップ接種が行われています。昨夏頃に流通が不安定になったことから、2025年3月31日までに1回でも接種していれば、2025年度中の接種が公費負担になるよう延長されています。もし対象者なのに接種していないのであれば、子宮頸がんを予防できるワクチンの接種を早急にご検討ください。通常は小6~高1での接種となります。実費にはなりますが、男性の接種も世界的には勧められています。
(薬剤師 中野洋子)
【23回目】新型コロナウイルス感染症治療薬
様々な呼吸器感染症が流行しています。食事前、顔や目、鼻を触る前には、必ず手洗いを行いましょう。そして、栄養バランスのとれた食事、気持ちの良い睡眠がとれるように、規則正しい生活を心がけましょう。
十分に気を付けていても、どこからか感染して、発症してしまうのも感染症です。その時は、解熱鎮痛剤、鎮咳薬、去痰薬などの対症療法を行いながら、水分をとり、暖かくして安静に過ごす事を優先しましょう。
新型コロナウイルス感染症には治療薬があり、診断された際には処方されることもあるでしょう。しかし、妊娠中に服薬した場合、奇形など胎児に影響を及ぼす可能性があります。妊娠あるいは妊娠の可能性があり、重症化リスクが高くない場合は、対症療法での加療をおすすめします。ぜんそくなどの呼吸器疾患、糖尿病、リウマチなどの免疫疾患など持病がある方は、新型コロナウイルス感染症治療薬を使って、重症化を防ぎ、早期回復できるように努めましょう。その際は、以下の期間を守って、胎児に影響を及ぼさないようにしておくと、安心ですね。
注意点 妊娠あるいは妊娠の可能性がある場合は服薬しない
ゾゴーバ錠は最終服薬後2週間は開けること(この間は避妊する)
ラゲブリオカプセル最終服薬後4日間は開けること(この間は避妊する)
薬剤師 中野洋子
【21回目】水ぼうそうと帯状疱疹はどう違うの?
帯状疱疹ワクチンのCMを見ることはありませんか?50歳以上で水ぼうそうにかかったことのある人が受けるワクチンです。不活化ワクチンは1回22000円前後、2回接種する必要があります。水ぼうそうのウイルスは治癒したあとも、症状は出さずに背骨の神経に潜んでおり、免疫機能が低下するとウイルスが活性化し、帯状疱疹を発症します。ワクチン接種で、ウイルスの活性化を抑えることができます。
水ぼうそう(水痘)ワクチンが定期接種となったのは2014年10月。今は水ぼうそうを発症する子供が激減しています。以前は、水ぼうそうの子供たちと出会うことで復活していた免疫機能が、今はよみがえるきっかけがないため、成人の帯状疱疹発症が増えています。
水痘ワクチンは1歳になったら接種するワクチンです。帯状疱疹は、神経にそって皮膚に水疱が現れ、そこにはウイルスがいます。水疱がやぶれて、空気に飛べば、ワクチンを打っていない子供は水ぼうそうを発症する可能性があります。水痘ワクチン未接種の場合は、帯状疱疹を発症している人には近づかないようにしましょう。ただし水痘に限り、暴露後72時以内に水痘ワクチンを接種すると、発症を予防できます。接触してしまった場合は、医師に相談してみましょう。
(薬剤師 中野洋子)
【20回目】治っても繰り返す皮膚の赤みはなぜ?
まだまだ暑い日もあり、衣類や寝具の調整が難しい状況です。そのため、汗疹や汗かぶれ、乾燥による皮膚トラブルが起こりやすい状況となっています。スキンケアの基本は清潔と保湿です。皮膚が乾燥しないようにしておきましょう。また、赤みの強い部分は、かゆいときはかゆみ止め、とびひは抗菌薬、赤く腫れて熱を持っているときは炎症が強いのでステロイド含有の外用薬を使用するのが一般的です。
皮膚は基底層から生まれて、表皮が毎日少しずつ剥がれ落ちています。その間隔は約28日。皮膚の赤みが生じた場合、皮膚全体に赤くなっているので、28日経過して、ようやくすべてが新しい皮膚に生まれ変わります。皮膚トラブルに対し薬を使って赤みが速やかに改善したとしても、その下の皮膚は元気な状態ではありません。ワセリンなどを塗布してスキンケアを部分的に強化することを約1か月続けることで、赤みの再燃を防ぐことができます。軽微な皮膚トラブルはワセリンで保湿を強化することで、改善することも多いですよ。
(薬剤師 中野洋子)
【19回目】インフルエンザと新型コロナのワクチン
10月より、インフルエンザと新型コロナワクチン接種が始まります。
ワクチン接種によりウイルスに感染しても、発症や重症化を防ぐ効果が期待できます。いずれも任意接種で、生後6か月から接種可能です。小児の場合、全額自己負担で、インフルエンザワクチンは1回3000~4000円、新型コロナワクチンは1回15000円程度となります。保育園や幼稚園、こども園など集団保育を受けている場合は接種を検討しましょう。
接種後、発熱、接種部位のはれ、痛み、かゆみが生じることもあります。万が一、副反応での登園、登校ができない場合は欠席扱いにせず柔軟に対応するよう厚生労働省から通達が出ています。事前に教育機関に相談して確認しておきましょう。ワクチン接種は接種前から体調を整え、接種後もゆったりして過ごせるようなスケジュールを立てておくことをおすすめします。
(薬剤師 中野洋子)